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2006年8月6日 「神は微笑んでくれた」(ドーバー海峡単独横断泳成功)湘南の主(5/7)

5.ドーバーの神は微笑んでくれた
 8月6日(日)午前4時起床。日本から持ってきた餅をインスタント味噌汁と一緒に食べて腹ごしらえをした。餅は腹持ちが良いので、日本で長時間練習の際はいつも食べていた。多分、明日まで固形物は口には出来ないはず。宿の窓から外を見ると、薄曇の空。しかも風は全く無いので嬉しかった。待ち合わせの時計台に予定通り到着。だが、まだパイロット、クルー、オブザーバーは顔を見せていない。ドーバーのハーバー内は風・波が全くない。ラッキーだ。
 ほどなく全員が出揃い、出港の準備が整い、いざ出発。気持ちは穏やかで気負いはない。船はハーバーを出て右に回り、スタート地点のシェイクスピア・ビーチを目指す。波穏やか、風も無く、薄曇り、最高のコンディションではないか!
 擦れそうな身体の部分にラノリンをたっぷりと塗りこんで、船から離れ、ビーチに向かって泳ぎ出した。ビーチには東洋系の顔立ちをした親子連れが散歩をしていが、立ち止まり、私を見ていた。見物人が二人出来た。ビーチに上がり、船の合図を待つ。フォーンの音が聞こえてきた。両手を挙げ「絶対、フランスまで泳いで行くぞ~~!」と雄叫びを上げて、ゆっくりと水に浸かり船に向かって泳ぎ出した。風なし、波なし、水温適温(19℃)。これ以上の条件は望めないくらい最高のコンディションの中、午前7時44分、ドーバー海峡単独横断泳のスタートは切って落とされた。やはり「神様は私に微笑んでくれたに違いない」とドーバーに住む神に感謝した。泳ぎ出してまもなくドーバーの防波堤が左側に見えてきた。ピッチを意識してゆっくり、ゆっくり泳ぐ。しばらくするとイギリスのドーバーとフランスのカレーを行き来するカーフェリーの大きな船体が何回も見えるようになった。フェリーの航路を横切っているようだ。
 遠くにかなり大きな貨物船らしき姿が見える。右から左に動いているようなので、まだハーフポイントまでは時間が掛かりそうだ。それから何回かの補給を受けた時、先生に「ハーフポイントはまだですか?」と尋ねたら、「通過しましたよ。」とのこと。「どのくらいの時間ですか?」と再び尋ねると、「6時間40分です。」との返事。エッ、凄く速いな、私の予定では8時間ぐらいだったから、とても順調に来ている。
 でもこの後が試練の泳ぎとなった。潮止まりのゴミの海を通過した後、急に四方八方から大波が押し寄せてきた。風も無いのにどうした事か?船の引き波も加わっているようだ。(石井先生曰く、「これがドーバーの潮波」らしい。)まるで川の激流のような不規則な波が私を襲う。予てから先生に言われていた。「眞壁さんの海練習の時はいつも波、風穏やかで、ドーバーの海とは程遠い。もっと波の高い海での練習が必要です。」と。それまでは比較的ゆったりしたピッチで泳いでいたが、この大波を乗り切るには波に負けないストロークで力強く乗り切るしかないと思った。昨年チャレンジし、残念ながら途中リタイヤした内藤さんが、「大波で力を使い果たした。」と語っていた言葉も思い出していた。
 不規則な波が襲うので呼吸もままならない泳ぎが続く。「神様、泳がせてくれ。祐子、泳がせてくれ!」と心の中で何回も念じながら大波に挑み、木の葉のようにもまれながらも少しずつ、少しずつ前進をしていたように思う。そしていつの間にかあの大波が嘘のように消え、三角波のピチャピチャ波に変わっていった。
 何とか乗り切れた。ドーバーの神様はここでも私の願いをお聞き下さった。
 次なる試練は、フランスの陸地が見えてからだ。既に右腕は力が入らなくなっていた。左腕で水をプッシュするとプランクトンが「サァ~、サァ~」と糸のように流れて行くのだが、右腕でプッシュするとプランクトンは「サ・サ・サ・」と点で見えていた。右腕にいくら力を入れて泳いでもプランクトンは「サ・サ・サ・」なのである。でも腕はさほど痛みがないのが幸いだ。
 岸の景色がどんどん変わる。左方向に流されている。それもかなりの速さだ。ここで思い出されたのが半月前に完泳したインドの女性の話。残り1マイル(約1.8km)を泳ぎきるのに3時間掛かったと言う。もし自分がそのような事態に陥ったら耐えられるだろうか?陸地が見えているとなおさら精神的に厳しいと思う。既にドーバー単独泳に3回も成功している藤田 美幸さんの言葉を思い出す。「眞壁さん、前を見たらあかんよ。船だけを見て泳がなきゃ駄目だよ。見えると自分で距離、時間を判断してしまう。でも絶対にそのようには泳げない。」。わかってはいるが、景色が見えてしまう。先生に「横に流されていますよねぇ?」と聞くと、「流されています。」と答えが返ってきた。「やっぱりなぁ~。」と、補給の度に変わる景色をついつい見てしまう。
 そしてドーバーの神様は三度(みたび)微笑んだ。周りの景色が見えないようにと、夜の帳(とばり)を降ろして下さったのだ。石井先生の合図で止まると「これからケミカルライトを装着します。船の側へ来て下さい。」との指示が飛ぶ。暗くなってきたという事は、もう12時間以上泳いでいることになる。「よし、20時間泳いでやるぞ!」とここで腹をくくった。周囲が見えなくなれば、船だけを見て泳げば良いので精神的には楽になった。
 先生は盛んにピッチを落とせと指示を出すが、これ以上ピッチを落とすと身体が沈んで呼吸が苦しくなるのでそのままのピッチで泳ぎ通した。このとき計測したデータによると1分に60回以上のピッチ数で泳いでいた。練習ではこのピッチでは必ずリタイヤしていた数値である。また後から聞いた石井先生の話によると、スイマーの私と先生が会話した時、オブザーバーが必ず「何を話した?」と聞いて来るそうである。飲み物もしかり、「何を飲ませた?」等々。正直に「呼吸が苦しく、身体が沈んでしまう。」などと言ったら船に上げられてしまう可能性があるので、「ピッチを落とせと指示したが、寒いのでピッチを上げて泳いでいる。」と説明したそうである。
 突然、側で大きな音がしてなにやら歓声が聞こえてきた。ビックリして泳ぎが止まる。泳いでいた私の側にボートがいた。昼間、私達を追い抜いて行ったアメリカ、テキサスのリレーチームが泳ぎ終わって私のために応援に駆けつけてくれたそうである。音楽がガンガン鳴っている。「オレェ~、オレェ、オレェ、オレェ~♪」と威勢の良い音楽が流れ、とても楽しい気分になった。アメリカ人は楽しみ方を知っているなぁ、私も音楽でも聴きながら泳いだら楽しかったなと思った。
 遥か彼方、左前方に町の明かりがゆらゆら見える。突然、先生のフォーンが聞こえてきた。

P8010014
南アフリカの女性スイマーと

P8010016
ゴック~~ン!!

P8010018
キンちゃんとも仲良しなウクライナから来たイゴ・ネンコ(左:スイマー)とイゴの兄(右:コーチ)

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