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わくわく、どきどき、台風の目。

« 「オープンウォータースイマー “湘南の主”も行く」 | トップページ | 「キンちゃんが行く」Vol.20 »

「キンちゃんが行く」Vol.19

1. アイランドスイム2日で2-way(約20km×2) 1st DAY

  • 1st leg: 江ノ島⇒城ヶ島1-way(約20km×1-way)
  • 日付: 2008年5月13日(火)
  • 場所: 神奈川県鎌倉市腰越⇒同県三浦市三崎町城ヶ島(相模湾)
  • 泳者: キンちゃん
  • 方法: 1-way solo swim
  • 記録: 台風2号接近のため中止
  • 海洋データ(横須賀)
     月齢: 7.6(小潮)
     日出 04:38       日入 18:37
     月出 12:16       月入 00:51
     満潮 00:01  1.37m  干潮 06:18  1.06m
     満潮 10:58  1.20m  干潮 17:50   0.64m

2. 一日目(1st day)

P51300022 キン「たまには“船上から見た遠泳”とかで書いてよ!」
と頼まれて、今回は私“tora”が書くことにする。
 湘南の主「さすが“嵐を呼ぶ女と災いを呼ぶ男の名コンビ!”季節はずれの台風が接近しましたね。」
とおっしゃるとおり、台風2号の接近で今回の1日目は遠泳(江ノ島⇒城ヶ島)中止。そこで地元湘南の主さんのお勧めする平塚市の「平塚総合体育館」、温水プール(長水路)へ出掛けることになった。午前中なら空いているだろう。
 キンちゃんの友達で、数年前に藤沢へお住まいになった「増田清美さん」(何処かでマラソンの選手で聞いたことあるような名前だが、別人)とおっしゃるオープンウォータースイマーもご一緒してくださるということで、私も含めて4名で泳ぎに行った。この増田さんは以前、KFC主催のテニアンのレースでお会いし、一緒にダイビングした仲間でもあった。
 湘南の主さんは最近他の水泳練習で“100m×100本”を2分とか1分50秒サークルで回る練習をしているらしく、私なんぞは「あれよ、あれよ」と言う間に“1周”、“2周”と抜かされてしまう。海で泳ぐよりかなりピッチも早い。
 湘南の主「海は到着するまで泳ぎ続けなければならないでしょう。プールは時間泳とか距離泳だから飛ばしますよ!」
とのことだった。
 まあ私はゆっくり頑張らないで泳ぐタイプ。それでもいつも偉そうにしているので、期待されて「かなり速く泳ぐのだろう」と思われるのが嫌で、知っている人がいるところではあまり泳がないが、「あいつはのろい」と周囲が知っているいつものプールでそこそこに練習はしているつもりだ。
 もちろんキンちゃんはいやらしく、抜かすときは私の足の裏をくすぐってから“ニヤッ”と笑って挨拶代わりに“ブタ鼻”でもしてから行く。まあ最近は慣れたけどね。
 午後になって片瀬西浜のビーチ沿いにあるイタリアンレストランで昼食会。
 美味しい食事と楽しい会話をつまみにビールをたくさんいただいた。満足、満足!
 三々五々、翌日の遠泳があるのでキンちゃんと私は帰ったが、増田さんと湘南の主さんは歩いて帰られた。何故ならばお二人とも最近は“歩き”にはまっているようで、地元、藤沢の街を歩き回っているらしい。

3. トラジオンスイミングクラブ

P51400042 少し私の仕事を紹介しておこう。ちょうど二十歳の学生の頃、障害者を対象に、海を泳ぐことを目的にトラジオンスイミングクラブは生まれた。その後、対象枠に“障害者”がなくなり、現在では“誰も”が入会できるようになっているが、やはり障害者が多いのがこのクラブの特徴であろう。まあ少数ながらも何とか現在でもこのクラブを継続させていただいている。
 さて、先ほど「私は水泳の練習でも頑張らない」と書いたが、水泳指導でも頑張らない。まあ障害者相手であるとかないとかではなく、スポーツ指導者の基本は「のん気」、「根気」、「元気」の“3気”だと思っている。だから「頑張って、頑張って、頑張って25m泳げるようになった。」より、「“愉快、愉快”とプールを楽しんでいたら、いつの間にか25m泳げるようになっていた。」の方が良いと思っている。
 上段に構えて「水泳とは~!」と口角泡を吹き飛ばして熱弁を語らずとも、環境を整えれば良いスイマーは自然に育つと信じている。樹木を云々語る人が多いが、問題はそれを育てる土なのだ。ハイレベルな技術の薀蓄を語る人が多いが、実は基礎となる裾野を広げなければ高い山にはならない。最も重要なのは、『反復練習』。それはきっと何処の世界でも共通していると思われる。
 まあいろいろと言い分けさせてもらったが、「愉快」、「楽しい」が私の水泳指導のモットーなので教室の雰囲気は明るい。が、実はけっこうハードな練習をしている。それをハードであるかどうか感じるのは各々の感性だが、演出として「厳しい」を望むならトラジオンスイミングクラブには向いていない。
 実は海を泳ぐのも一緒でハイレベルな技術論云々ではないと思っている。海は「経験」がモノを言う。その環境の変化に順応できるスイマーが最も海を泳ぐ能力が高いと言える。以前、国体に参加したこともあるスイマーが海では腰より深いところへ入れなかった。海とはそんなところである。
 さて、今年28歳になったKがいる。彼は知的障害でトラジオンには中学の頃に入会した。中学を卒業するとデパートの食堂に就職し、来る日も来る日も皿洗いをしている。しかし彼にとってそれは楽しいのだが、月曜が休日の彼は他に遊び相手の友達がいない。月曜日は二コース続けてトラジオンの水泳教室に参加しているのだ。
 数年前、Kは英語に凝り始めた。そこでプールの監視員室に貼ってあるカレンダーで“January”、“February”、“March”、“April”、・・・とやり始めた。まあ水泳教室をやっているんだか、英語教室をやっているんだか・・・。それでも重要なのは“繰り返し”である。何とか彼は1月から12月までを英語で言えるようになった。
 そこで次は曜日である。“Sunday”、“Monday”、“Tuesday”、“Wednesday”、“Thursday”、・・・。1週間をようやく覚えた頃に彼は私に質問をしてきた。
K「先生、“ソース”は英語で何て言うか知ってる?」
tora「ン? “ソース”は英語でも“ソース”じゃないの??」
K「違う!」
tora「ヘー、じゃ英語で“ソース”は何て言うの?」
K「ソースは・・・ブルドック!」
 このときは大いに笑った。
 最近のKの言動も面白いので書き加えておこう。多くの自閉的性格を持つ人と同じように、Kが好きなのはカレンダーとか天気予報だ。先のことを知って予定通りに行動をするのが好きだ。嫌がるのはハプニング。予定通りではないからだが、ご両親はこの辺を心配してKにケータイを持たせている。「ハプニングでどうしたらよいかわからない。」とか「迷子になった。」などというときにケータイが活躍する。
 最近社会では子供にケータイを持たせるべきか否かで問題になっているようだが、それはケータイの持つ利便性の是非を論議しあっているに過ぎない。まあ「裏サイト」などと呼ばれるケータイの落とし穴に“転ばぬ先の杖”を出そうとしているのであろうが、Kに関しては問題がない。何故ならば彼は必要なひらがな以外は読めない。いわゆる“サイト”と呼ばれるケータイのネットを仮に開くことが出来ても読むことは出来ないからである。
 そんな彼がつい先日私にこんなことを言ってきた。
K「ケータイに変な人から電話があった。」
そんな怪訝な顔をしているKに
tora「ふ~ん。ケータイ見してみん。」
ケータイを見ると着信履歴にそれらしき人からかかってきた形跡はない。
tora「お前が誰かにかけたんじゃないの?」
K「オレ、かけないよ!」
 口を尖らせて言う彼に嘘はない。(嘘がつけるほど知的レベルは高くない)
 こんなときは関心事を変えた方が良い。
tora「天気はどうなんだ。明日(遠泳予定日)は晴れるか?」
K「明日は台風。」
tora「ええ、お前、呼んだな?」
K「えっ、オレ、呼ばないよ!」
tora「嘘つけ! お前が電話して、“台風、来てください”ってお願いしたろ!」
K「してないって!」
tora「いや電話した。どうやって何処へ電話したんだ!? 言ってみろ!」
K「フィリピンに電話した・・・」
tora「ほらやっぱり電話したじゃないか!? 電話番号は?」
K「1711」
tora「みろ! お前はフィリピンに電話して“台風、来てください”って頼んだんだろう! みんなが迷惑!!」
K「してないって!」
tora「じゃあ“1711”って何処の電話番号だ?」
・・・てなことで、可愛そうにもKは私によって「台風を呼んだ」ことになってしまったのだった。
 Kの言葉をまともに通訳すると、「フィリピン付近で生まれた台風2号は日本に接近して、明日、最も関東地方に近付く」、ということだ。
 このようにまっとうなことより“ノリ”で関心事を変えていき、周囲の人(Kを知っている健常者)に「Kはフィリピンに電話して台風を呼んだ!」と言っているほうが、周囲の人も「お前、スゴイ奴だな!」と言ってくれるので、Kもそのハプニングを忘れ、笑顔に戻るのである。
 さてこのK、自分のお尻を“パン、パン、パン”と叩くこだわりがある。それが実に良い音で、プール中に響き渡っている。あまりにも良い音なので私も真似してお尻を叩いてみるが、彼のような良い音は出ない。それでも“パン、パン”叩いていると、まだ言葉の出ない知的障害の子が「ウ~~」とうなりながら模倣で自分のお尻をパンパンと叩き出す。それが「ウ~~」と“パンパン”が重なって、とてもセッションなのだ。その内私はプールで音楽をやりだすかもしれない。もしかしたらライブでも・・・。
 そんなこんなで私の仕事はとても愉快で楽しい。まあ水泳教室の内容を語るほどのものではないが、指導者はやはり「エンターテイナー」でなければならないと思っている。
 まあ他に「プールでウンチ事件」は珍しいことではなく、“素手でウンチ処理”など手馴れたものだ。こんな時、『海だったら良いのになぁ~』と思うことがある。まあ海は水洗便所の中で泳いでいるようなもの、海が勝手に浄化してくれる。
 また全盲の子供を持つお母さんがよく言う。「見えないから手づかみで食べるが、ココは日本だからね。インドだったら誰も何とも思わないだろうに・・・」と。
 このように「海だったら良い」とか、「インドだったら良い」とか・・・。“無いものおねだり”なのかもしれないが、環境や条件によって変わってしまう。海で泳ぐことも同様。“日本の常識、世界の非常識”とか、“世界の常識、日本の非常識”とか・・・。最近、こんなことばかり考えている。
 とにかくトラジオンの会員さんはそれこそ“人種の坩堝(るつぼ)”と言って良いくらい個性豊かな面々ばかりである。毎日が“珍談・奇談”の連続であって、それこそ「何が常識」かわからなくなる。
 まあ障害者のこと、海を泳ぐこと、その他いろいろ言いたいことはあるが、それは「いつしか」ということにしてもらって、さて、台風はKが呼んだかキンちゃんが呼んだか不明だが、本題に戻そう。

4. アイランドスイム2日で2-way(約20km×2) 2nd DAY

  • 2nd leg: 城ヶ島⇒江ノ島1-way(約20km×1-way)
  • 日付: 2008年5月14日(水)
  • 場所: 神奈川県三浦市三崎町城ヶ島⇒同県鎌倉市腰越(相模湾)
  • 泳者: キンちゃん
  • 方法: 1-way solo swim
  • 記録: 10時間57分
      06:30 城ヶ島 ⇒ 17:27 江ノ島
  • 天候: 曇りのち雨、のち晴れ
  • 気温: 10.1~16.5℃
  • 水温: 16.0~18.5℃
  • 波高: 1.0~1.5m
  • 風向・風速: 主に北、ないし北東 3.2~10.2m/sec
  • 流向・流速: 主に東、ないし東北東 0.3~0.5kn
  • ピッチ: 63~68回/min
  • 補給品: 炭水化物、果糖、お茶類(40分毎)
  • 海洋データ(横須賀)
     月齢 8.6(長潮)
     日出 04:38       日入 18:37
     月出 13:17       月入 01:18
     満潮 00:55  1.40m  干潮 07:35  0.88m
     満潮 13:05  1.23m  干潮 18:59  0.73m

5. 二日目(2nd day)

P51400052 早朝4時に起床。薄明るくなった外を眺めると“台風一過”という期待を裏切られ、どんよりとした雲の多い中、4時半、腰越漁港に集合。湘南の主さんも到着、5時に出航し城ヶ島に向かう。いちおう漁網など、定置網や設置された漁具の位置確認をして城ヶ島に向かった。
 6時に城ヶ島の浮き桟橋に接岸し、キンちゃんは泳ぐ準備にかかる。船揚場に歩いて行って6時半に泳ぎ出す。まあここまでは「順調」と言って良いだろう。ところが「さすがキンちゃん!」と言うべきか、予想した潮とはほとんど違っていたのである。
 相模湾内の海流は、普通“半時計回り”に流れている。それに潮流の成分が海流の成分を加減させている。潮汐では8時頃に干潮で13時頃に満潮になるので、理屈ではその間はキンちゃんを潮が押してくれるはずである。もちろん風の影響もあるのだが、私の考えでは三浦半島に沿って北上した方が潮に乗って泳げる計算だった。
 ところが・・・、
 城ヶ島には神奈川県水産技術センターがあって、そこではリアルタイムで海のデータを出している。それを私の持っているケータイ端末で見ることが出来る。まあ便利な時代になったものだが、ものの見事に私の出した潮の流れの予想とは違ったものになっている。おかしい・・・。
 過去に2回ほどキンちゃんは「アイランドスイム2-way」に挑戦している。このときは江ノ島の隣、片瀬西浜の水族館前のビーチから城ヶ島への往復計画であった。結果は城ヶ島への1st legは2回とも10~10時間30分程度で成功している。しかし帰りの2nd legで2回ともリタイヤしてしまった。
 一般的に2-wayなら行きは“潮に逆らって”帰りは“潮に乗って”が順当であろう。しかし楽なはずの2nd legで2回ともリタイヤしたのは「キンちゃんらしい」と言えばキンちゃんらしい。したがって今回は初の“城ヶ島⇒江ノ島”になる。しかも普通なら楽なはずなのだが・・・。
 スタートして2時間。午前8時を過ぎると雨が降り出した。風は台風の置き土産か、相変わらず強い。7~8mの北東風が容赦なく吹いてくる。まあ風が北東もあって、“いつもなら”潮が我々を押してくれるはずなので、船が風に向うようスパンカーを張り、三浦半島の沖合約3kmを三浦半島に沿って北上するよう舵をとった。
 しかし進みが悪い。ケータイ画面から見る神奈川県水産技術センターのデータもまったく私の予想を裏切っている。そして風は最大風速10mを越した。
 たまたま三浦半島に沿っているので波高は風の影響が少なくそれほど高くはない(1.5m)のだが、私の持つ“安全基準”では「風速10m/secを越したら“不可”」となっている。まあおそらく天気から予想して今が“最大”なのであろうが、ある意味「中止」が私の心をよぎっていた。

6. 海峡横断泳実行委員会

P51400222 再び“のっけ”からで申し訳ないが、もう一つの私の顔、「海峡横断泳実行委員会」について触れておこう。
 今から30年ほど前、海峡横断泳の発展(普及と養成)を願って「海峡横断泳実行委員会」なるものを立ち上げた。主な内容は「大会の開催(プール、海)」、「フォーラムの開催」、「海峡横断泳の企画及びコンサルタント」だ。もちろん当時、「オープンウォータースイミング」なんて言葉はない。“遠泳”と言えば、古式豊かな隊列を組んで「エーンヤコラ~!」とか叫びながら顔上げ平泳ぎで泳ぐ方法をイメージされてしまうので、「ロングディスタンススイミング」とか「マラソンスイミング」とか、とにかく“横文字”の言葉を書き連ねていた。まあ「海峡横断泳」と言うのも“顔上げ平泳ぎではない”という少しのこだわりであった。
 今では少なくなった質問だが、以前は「何泳ぎで泳ぐのですか?」とよく聞かれ、「クロール」と答えるとほとんどの人はビックリしていた。どうも“顔上げ平泳ぎ”のイメージがあるようだ。それもそのはず私の幼少の頃、辞書で「クロール」を調べると、「短距離を速い速度で泳ぐ泳ぎ方」と書いてあった。昔の海は、顔上げ平泳ぎが主流であったのかもしれない。ちなみに今のトライアスロンやオープンウォータースイムレースではクロールが主流である。
 さて、キンちゃんとはこの中の「大会の開催(城ヶ島1周のレース)」で2000年に知り合った。もちろんキンちゃんは選手として参加してくれたのである。以来、「大会(12時間スイムマラソン[プール])や「遠泳フォーラム」にも参加してもらっている。
 1999年に芸能人の「ドーバー海峡横断部」の放送(16時間37分で成功)があって以来、多くの海を泳ぐスイマーがドーバー泳に関心を持ったようだ。
 海峡横断泳実行委員会としても1999年に障害者も含むリレーチームを作ってドーバーの1-wayを成功させている(CST 99 Japan 14時間00分)。また2001年には同じく障害者を含むリレーチームでドーバーの2-wayにも成功させた(CST Japan Team 28時間44分[英→仏13時間44分+仏→英l5時間00分])。
 こういった企画の中で、“泳ぐドクター”として知られるO先生に、「どうかリレーチームを作って私にも参加させて欲しい。」という依頼を受け、当時、海峡横断泳実行委員会で行っていた企画に「ドーバーを泳ぎたい」と要望をしている6名のスイマーを集めてチームを結成した。そのチームの中にキンちゃんがいて、湘南の主さんも加わっていた。そしてこのリレーチームは2002年に1-wayを成功させたのだった(Okuzawa 12時間03分)。
 2003年には各自、各々のスイマーに戻るのだが、キンちゃんは「今度ソロで泳ぎたい。」と2004年から私と“二人三脚”でドーバーを望むようになった。
 2004年は2回チャレンジして2回とも失敗に終わった。しかし2005年に再び2回チャレンジして2回とも成功(17時間03分 13時間41分)。2006年にも1回泳いだ(13時間35分)。ちなみに2006年に湘南の主さんも成功させている(15時間50分)。2007年に2回泳いで2回とも成功(13時間59分 13時間54分)。まあ全て1-wayであって、主目的は日本人初の2-wayなのだが・・・。
 他にキンちゃんで言えば津軽海峡を4回横断している(2005年 1-way 11時間36分 2006年 3-way 37時間24分[青→北11時間43分+北→青15時間28分+青→北10時間13分)。
 この他、海峡横断泳実行委員会ではドーバー海峡では4回、津軽海峡では3回のサポートしている。他にも「海峡」と呼ぶ名の横断泳は国内外を合わせるとかなりあり、「海峡」と呼ばれなくとも距離が10km以上の遠泳は、その合計は100例を軽く越す。
 例えばキンちゃんだけを見ても初のサポートは三浦半島の先端、城ヶ島から毘沙門天の往復になるが、以来、城ヶ島の周回、三河湾の舵島往復と周回、相模湾は城ヶ島~江ノ島間、初島~熱海間、駿河湾なら三保~戸田間、そしてすでにホームゲレンデになった淡島~大瀬崎間、などなど。その合計でさえおそらく100例は越しているであろう。
 ただ、2006年3月末日を持って大会やフォーラムは撤退した。現在は「海峡横断泳の企画及びコンサルタント」のみしかやっていない。何故ならば私にも他にやりたいことができたからだ。時折「城ヶ島の大会に参加したいのですが」と未だに問い合わせがあるが、現在は城ヶ島の大会はやっていない。
 最近になって「他の大会の企画を」と少し考えるようになったが、おそらく城ヶ島ではやらないであろう。

7. 一期一会と祈り

P5140025_2 自分がまだよく海を泳いでいた頃、よくパスカル(Blaise Pascal [1623年6月19日~1662年8月19日:フランス人] 数学者、物理学者、哲学者、思想家、宗教家)の「人間は考える葦である」を考えていた。この「人間は考える葦である」はパスカルの「パンセ(キリスト教弁証論)」の中に出てくるあまりにも有名な言葉で、「人間は広大な宇宙から見ると“無に等しい”ほど小さな存在であるが、その思考は宇宙をも包み込むことができる。」という意味である。
 海を取り巻く環境は、潮流や海流、風などに支配され、海の営みに比べれば私の存在など“無に等しい”と思えたからであった。例えば潮汐は「天体潮汐」と呼んで月や太陽の重力が大きく支配している。海流も風(貿易風や偏西風)と同じように回転する天体に存在する流体物(液体や気体)の動き(コリオリの法則など)である。いちおう学生時代は「体育学」を専攻していたが、40歳を過ぎて再び大学に通い始めた。専攻は「天文学」である。「宇宙」という大きな営みから「自然と人間との係わり」を捉えたかったからであった。
 いずれにせよ今、キンちゃんは大海原の中で江ノ島を目指して泳いでいる。150cmと、宇宙から見れば吹けば飛ぶような小さな身体をメいっぱい使って泳ぎ続けている。この“非生産的な行為”は、政治や経済を主眼におく方々にあまり理解はされないが、「人間が人間である立証」に多いに貢献していると思われる。「夢を現実に」、これは動物界の中でも人間のみにしか許されていない行為なのだ。
 「願わくば、キンちゃんの夢を叶えてください。」と祈るばかりなのだ。
 絶え間なく降る雨は小さな波を抑えてしまう。江ノ島までのコース取りは、今までのデータから来る潮の流れを考えた方法だが、それはあくまで“統計と確立”から算出したものに過ぎない。海の神様は“女”だから、昔の海は「女人禁制」だった。神様が“やきもちを焼く”からだそうだ。
 湘南の主さんが「“嵐を呼ぶ女”と“災いを呼ぶ男”のコンビだから・・・」と、ボソッと言った。確かに我々は想定外のトラブルが多い。
 キンちゃんはよく「場所が同じ海でも同じ海の顔を見たことがない。」と言う。それはドーバーを43回も横断したギネスブックにも載るスイマー、“アリソン・ストリーター”も同じようなことを言う。「43回ドーバー海峡を泳いで渡っても、一度として同じドーバー海峡を見たことはなかった。」と。
 このようにしてキンちゃんは海との“一期一会”を楽しんでいる。時折「まいった!」と根を上げることもあるが、ほとんどは海との一期一会を楽しんでいる。そこがキンちゃんの素晴らしいところなのだ。
 午後3時を過ぎた頃、ようやく雨が上がり、風が凪いできた。しかし相変わらず潮周りは良くない。それでもそんな海を恨むでもなく泳ぎを楽しんでいる。無邪気な子供が遊ぶ小さなプールに浮かぶ人形のように・・・。
 完泳予定の8時間はとうに過ぎ、船は風に立てるため北西を向いているが、進行方向はほぼ西の江ノ島を目指していた。
 知的障害のKが呼んだか、キンちゃんが呼んだかは定かではないが、ようやく台風2号が過ぎ去ったらしく、雲の切れ間に太陽が顔を出した。船上の我々はビショビショになった服や機材をデッキに出して乾かし始めた。そんな折、船長の松本さんが一言。「始めからこの天気だったらなぁ~・・・。」
 こうして17時27分、江ノ島の隣の腰越のビーチにキンちゃんは立つことが出来た。城ヶ島を出発して何と10時間57分後のことであった。
 キンちゃん、感動とデータをありがとう!!

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