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「キンちゃんが行く」Vol.13

 この海練習は、ドーバー泳を公認する団体「CS&PF」の申し込みに必要な「16℃以下の水温による6時間泳の証明」の証明書作成につながっています。

  1. 淡島~大瀬崎間2-way(約10km×2-way:6時間泳証明)

  • 日付: 2008年1月15日(火)
  • 場所: 静岡県沼津市三津淡島~同県同市大瀬崎(駿河湾)
  • 泳者: キンちゃん
  • 方法: 2-way solo swim
  • 記録: 7時間35分
        1st leg: 07:03 淡島 ⇒ 10:00 大瀬崎 2時間57分
        2nd leg: 10:00 大瀬崎 ⇒ 14:38 淡島 4時間38分
  • 天候: 曇りのち晴れ
  • 気温: 4.7~9.4℃
  • 水温: 14.0~14.2℃
  • 波高: 0.5~1.0m
  • 風向・風速: 主に東 3.2~5.5m/sec
  • 流向・流速: 主に西 0.0~0.5kn
  • ピッチ: 65~68回/min
  • 補給品: 炭水化物、果糖、お茶類

  2. 水温14℃

P1150023_2_2 日本の冬の海は、外洋と湾内の水温を比較すると、外洋よりも湾内の方が低く推移している。特に黒潮の軸流では今でも20℃を越す水温を保っているが、三河湾は10℃を切ったそうである。東京湾は13℃。ただ、今上げた三河湾や東京湾など、湾と外洋の接点である湾口が狭い湾内ほど水温は低い傾向にある。しかし湾口の広い駿河湾や相模湾では、湾奥でも三河湾や東京湾に比べて水温は高いと判断していた。
 だが駿河湾や相模湾の沖合を流れる黒潮は、ちょうど“大蛇行”する地点でもある。気ままな黒潮の向きによって、湾内の海流は大きく変化し、水温も変動する。まあ風の影響は考えなければ、水温が温かければ海流は速いだろうし、冷たければ流れが少ない。
Photo_3 いずれにせよ黒潮の軸流は、「夏に接岸し、冬に離岸する」傾向がある。したがって夏に比べれば駿河湾も相模湾も海流は穏やかな傾向にあり、水温は三河湾や東京湾に比べてちょっと高め。今回泳ぐ淡島~大瀬崎は駿河湾の湾奥に位置するが、多分14.5℃だと予想していた。
 寒気が入り12日辺りから、風が吹き寒い日が続くと聞いていた。先週は、暖かかったが、まあ、私が泳ぐ時は「こんなもんだ」と最近は慣れてきて、別に寒かろうが水温が低かろうが、小島ではないが「そんなの関係ねぇ!」と、心の中で踊りながら呟いている。
 海練習する日は決まっている。どんな状況でも泳がなければいけない。無駄なことはあまり考えたくない。マイナスになるだけである。主導権は船頭さんとコーチの判断。ただ私は長く敷かれた線路をひたすら泳ぐだけなのだ。何も考えなくていい。泳げばいいのだ。
P11500052 と、簡単に口では言えるが、これを実行するのはなかなか難しいのが現実である。
 水温14℃で淡島~大瀬崎は過去2回ほど泳いだことはあるが、今回のように7時間35分もかかって2-wayを泳いだのは初めてである。冬の海は潮が遅いそうだが、船頭の菊地さん曰く、「この時期にこんな速い潮は珍しい。」そうである。これも泳いでみなければわからないこと。データでおおよその目安はつくが、「最近の海洋状況は狂っている。」と菊地さんは言う。ここらでも越前クラゲが現れたとか! そう、去年はここらでクラゲが異常発生していたと思う。それは毎年毎年泳いでいるから分かっていることだ。
 おっと、前置きが長すぎた。元に戻そう。
P11500082 今回14℃で泳いで、入り始めの気温が7℃。なので水温確認しても「温かい」としか感じない。まあ冷たく感じるより良いが、14℃なのである。太っているせいか、身体はそう「寒い」とか「冷たい」とかは感じない。が、感覚が麻痺している。クロールで手を動かしても「この泳ぎでいいのか?」、「手を回しているだけじゃないのか?」と、感覚がない。まあ、いつもの練習のフォームになっているとは思うが、ピッチが速いような気がする。
 40分に一回の補給も、止まっていると寒いのであろう。1-way目の淡島から大瀬に向けては潮に乗って行くせいもあって、菊池さんとコーチは「速い! 速い!」と叫んでいるが、話し好きの私でも“コクリ”と頭を下げて相槌するだけである。唇が思うように動かないのだ。だからプラティパス(栄養補給用の水筒)から口に付け補給するが、かじかんだ唇、いつもより時間がかかってしまう。そう、波を見ながら、感じながら、息を吸うかどうかも鈍感になり、知らずに口が開いている時があり、海水を飲んでいる。それが頻繁に今回はあった。「口を閉じている」と思ってはいるが、実は半開きか開いている。それに海水を飲んでも、いつものショッパサを感じない。いつもなら海水を飲むと気持ちが悪いので私は泳ぎながら吐くのだが、気持ち悪さを感じないのである。
 と、水温14℃で泳ぐと、私はこういう状態に陥ることを再確認したのであった。

  3. スイミングゴーグル

 海で泳ぐとき、いつも私は3つのスイミングゴーグルを持って行く。それは色別で、クリア、少し暗め、黒といった具合に、その日の天候や朝、昼、夜など、外の明るさを見て変えていくのである。
P11500122 屋内プールでは、常に照明が管理され明るさが安定しており、明るさに対しては泳ぎやすく、たぶん、自分のお気に入りゴーグルをかけていれば満足な泳ぎは保障されていると思う。が、海、照明が満足でない屋外プールでは、自分の眼の感覚でゴーグルを変えていかなければならない。
 今回は、海を泳ぐのに命の次に大切だと思っているゴーグルの調節が今一つであった。
 泳ぎ出して1時間も経たないうちに海水が入ってきた。何回出しても、またすぐに入ってきてしまう。「おかしいなぁ~。ゴムのベルトやパットが寿命なのか?」。眼が命のスイミングゴーグルは、いつもフィットするように調整はしてあるので、毎回毎回使っているが、こんなことは今までにない。過信しすぎたかもしれない。
 そう、過去に海水、プールの水を少しでも入れて何時間も泳いだことはあるが、その時はだんだん瞼(まぶた)が腫れてきて、目ヤニを出しながら泳いでいた。一回目ヤニが出ると、拭いても、拭いても次から次へと目ヤニが出てくるのである。おまけに瞼が腫れているので、片目で泳ぐ破目になる。そう、泳いだ後も目ヤニの続出。寝ている間も目ヤニが出て、朝、起きたら目ヤニで眼が開かないこともあった。だから、そういう時はいつも寝る前に濡れたタオルを枕元においておいた。
 だんだん明るくなり、眩しくなってきた。まあ、海水も入ってくるゴーグルだったので、「コーチ、ゴーグルチェンジ!」と、補給時に伝える。
 「ああ、さっきよりゴムベルトがきつく感じる。何だかいつもと同じ黒なのかな?」、「いつもと違うメーカーのゴーグルを間違えて持ってきてしまったのかな?」、「しっくりいかない。何故だか水が入っている感じ。おかしいなぁ~。」と、何回となくゴーグルに手を触れ、水を出していた。しかししっかり水が抜けないというか、常時海水が入っているような気がしていた。
 「コーチ、ゴーグル再チェンジ!」と3つ目のゴーグルに交換。今度は仰向けになり、しっかり眼を拭き、ゴーグルの中に水が一滴も無いことを確認してセットした。だが、まだ海水が入っている気がする。そのうちだんだん眼が痛くなってきて、「コーチ、眼が痛い!」と告げるが、コーチは「眼が痛いのか?」と言う。少し泳いで「眼を瞑って泳いどるよ。」と言うと、引っ叩けば眼が開くと思っているのか、「両手でホッペ叩いてやるからこっちへ来い!」と言う。
P11500162_3 これだけキンが痛がっているのに、コーチからの優しい言葉は一つもない。キンは甘えん坊。優しい言葉が欲しかったが、こんな言葉が返ってくると、ひたすら泳ぐしかなかった。もう眼を開けていると痛いので、両目を瞑って泳ぐしかない。まあ寝ながら泳ぐ“睡眠グ”は得意の私だ。時たまうっすら片目を開けて、横にいる船を確認していればいいことなんだ。
 その時は何かを考える余裕はなかった。ただひたすら手を回し、眼をギュっと瞑って泳いでいるだけであった。と、フォーンの合図で我に帰るのである。
 後から聞くと、船の右に私をつけるときは、「いつもピタリと船の横で泳ぐのに、今回はやけに離れて泳ぐなぁ~。」と言っていたらしい。自分はいつもの感覚で泳ぎ、そんなに船から離れているとは夢にも思わなかった。
 後から思えばゴーグルに入っていたのは海水ではなく、自分の涙みたいだった。泳ぎ終わった後、右眼の中がゴロゴロしてゴミが入ったみたいだった。痛くて、痛くて涙が止まらなかったので、濡れたタオルを眼に当てていた。眼球を動かさなければあまり痛くなかったからだ。
 コーチに目薬を点してもらったが、キョ~レツな痛みと沁(し)みが走り、このときばかりは暴れまくった。この目薬は強過ぎた。死ぬかと思ったよ。
 洗面器にお湯を入れ、その中に顔を入れて眼をパチパチさせたがゴミは一向に取れず、眼を閉じれば痛みは和らぐので、その日は早めに寝た。翌朝起きたら目ヤニと一緒にゴミは取れたみたいだが、瞳はまっかっか。傷がついているといけないので、帰宅後は真っ先に目医者に行った。
 その帰りのこと。いつもの新幹線「三島」駅までコーチのクルマで送ってもらっているときの会話。
キン「キンは甘えん坊。どうして“目が痛い”って言っているのに優しい言葉をかけてくれないの?」
コーチ「じゃあドーバーだったらどうする? “目が痛い”でやめるのか?」
キン「そうだよね。眼が痛くたって泳がなくちゃいけないんだよね。」
 コーチから優しい言葉をかけられたら、ヘナヘナになって、泳ぎをやめていたかもしれない。
 そう、コーチはいつもドーバーと同じ感覚で遠泳に望んでいるんだ。これはキンの反省点でもあった。
 それから救急セットには、これから眼帯や洗眼薬を持って行かなければな、と思った。自分が痛い思いをしなければわからないんだよなぁ~。

  4. 今回は

 3-wayの予定だったが、眼と足の痛みで2-wayでやめてしまった。
 今は足の治療で“スポーツドクター”がいる「はまな整形外科クリニック」に通っている。毎日が仕事、練習でリハビリが思うように出来ない。が、ストレッチなど、いろいろ教えてもらってやっている。泳ぐための身体作り。“遅い!”と叱られそうだが、それだけ今の自分に危機が迫っているのかもしれない。1-way、いや2-wayは、手を伸ばしても、手を伸ばしてもなかなか届かない。いや、近づく努力を、今、している。一人では出来ない。みんなの力を借りているのだ。
P11500182 「キンちゃんが行くVol.12」で書いたが、25m泳げるようになったSさんが、最近25mまで行って、ターンすることが出来るようになった。毎日毎日、少しずつ進歩しているのが手に取るようにわかる。そして一昨日から「ターンしたら、手を3回廻して下さい。」と、少しでも長く泳げるように課題を出している。
キン「ウ~ン、もう少しだね。」
キン「あれ~、立っちゃったの~?」
キン「1回だけでもターンしたら手を廻して!」
のやり取りが続く。いつも私はSさんが泳ぐ隣のコースでチェックしている。
キン「ターンで止まらずに、今日は3回くらい手を廻そうね。」
S「ウ~ン、そうだね。」
 「あっ、来た、来た! Sさんが向こうから泳いで来た! あっ、25m泳げたなぁ~。おお、ターンしたじゃん。よしよし、あっ、手を廻したじゃん。1回、2回、3回、4回、やったぁ~!!!!」
 Sさんはこの日、36m泳いだ。その顔はやはり笑みでいっぱいだった。
キン「泳げるじゃん、泳げるじゃん! ターンして泳ぐ気持ちがあったから泳げたんだよ! 泳ぐ気持ちはみんな一緒なんだから! 距離は長いけど、泳ぐ気持ちは私も一緒だから!」
 何だかまたまたSさんに元気をもらってしまった。
P11500302 そう、距離は違うけど、努力していることは一緒である。今、Sさんは努力して、努力して、伸びに伸びている。「何だか私、気持ちの面では今、負けているな。」と、穴があったら入りたい気持になった。いや、Sさんに負けず、諦めてはいけない。何があっても泳がなくてはいけない。「気持ちが一番大切だ!」と、つくづく感じ、新たなるステップへ歩いて行こうと思いました。
 そう、Sさんが50m泳ぐのが目的であれば、海で私が思っている距離を完泳することと、気持ちは一緒だから!

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