「キンちゃんが行く」Vol.11
1. 三保~戸田(:約20km)2-way
- 日付:2007年11月26日(月)
- 場所:静岡県静岡市清水区三保~同県沼津市戸田(駿河湾)
- 泳者:キン(美幸)ちゃん
- 方法:2-way solo swim
- 記録: 10時間17分
1st leg: 04:18三保発 ⇒ 13:58戸田着 9時間40分
2nd leg: 13:58戸田発 ⇒ 14:35大腿部痛のためリタイヤ 37分 - 天候:曇り、晴れ
- 気温:12.0~19.8℃
- 水温:19.1~20.0℃
- 波高:0.5~1.0m
- 風向・風速:主に北東 0.0~5.9m/sec
- 流向・流速:主に南西 0.0~0.5kn
- ピッチ:62~65回/min
- 補給品:炭水化物、果糖、お茶類
2. 忘れ物と忘れてはいけないこと
「恐れるなかれ、侮るなかれ。」、これは石井コーチの座右の銘である。大自然の海を泳ぐ心構えとして、“常に謙虚に。そして勇気を持って事に当たれ。”という意味だ。なかなか的をついた良い言葉だと私も思っている。当然それらは実行しなければならない泳者の義務でもあるのだ。
遠泳は「危険」と言う大きなリスクがある。いつも石井コーチの言うことは、「“危険だからやめる。”ではなく、危険だからこそ“どうやったら安全に出来るか。”が人間の英知である。」とのことだ。つまり1番恐ろしいのは“慣れっこ”になること。自然界では「いつもはこうだから」とか「普段はああいうふうになっている」とかは通用しない。そこでコーチの言うことは、必ず「荷物表作り」から始まり、今、書いているような報告原稿を書かされる。それも毎回、毎回だ。
もちろん今回も荷物表を作ってコーチにはFAXで知らせた。しばらくするとコーチからメールが来た。今回の荷物表に記載されていない荷物オン・パレード・・・。何でこんなに荷物の記載を忘れたのだろうか・・・。この事実は今の私にとってかなりショッキングな出来事であった。
話は前後するが、11月15日からロタへ行った。目的は11月17日にKFCトライアスロンクラブを通じて開催される「第14回ロタブルー・トライアスロン」に参加するためである。まあこの話は後ほどすることにしよう。
とりあえずこのレースを終えて11月19日の朝にサイパンまで戻った。サイパンからの名古屋便は翌朝にしかない。したがって19日の午後にはダイビングで楽しむことにしていた。そしてサイパンでは決まって「エーストマト」と呼ぶダイビングショップを拠点に潜っている。ここエーストマトの代表者「ボス(通称)」はダイビングのプロで、とても厳しく優しい。
エーストマトでは別のお客さんと午前中はファンダイブである。まあこのお客さんも常連で私も知っている日本人。しかも海については“プロ”の方である。そのプロのお客さんが午前のファンダイブでレギュレターを忘れた。当然、午前中は潜れない。午後になって私たちと合流したときはショップに戻っているので忘れ物は元に戻ったが、午後のダイビングではボスがウェットスーツを忘れた。まあ裸で潜る破目になったが、この日は大雨で南国のサイパンもけっこう寒かった。その寒さに震えながらボスは潜っていた。
海のプロ、ダイビングのプロでもこのような忘れ物をする。これらの原因のほとんどは“慣れ”から生まれる。慣れは怖い。今年ダイバーでヨット乗りの友人がヨットの遭難で亡くしている。これもおそらく“慣れ”から来る心の隙間に死に神が潜入したと思われる。
3. 初心忘れるべからず
話はまだ脱線しているが、ロタのレースのことを少し話しておこう。ロタと言えば「第1回ロタブルー・トライアスロン」が開催されることを雑誌から知り、このレースに参加したことがきっかけになって毎年私はロタに通いつめている。「ロタブルー」と呼ばれる透明度60mの海に私は取りつかれているのだ。レース中にエイを観たり、イルカ8頭と共に泳いだりでビックリしたことがある。まさに「夢の海」なのだ。
まあこのレースで競り合いながらも一緒に泳いでいたのは今も尊敬しているN女子である。あれ以来、今もとっても仲良くして下さって、今でもたいへんお世話になっている。
北マリワナ諸島の中でも私はロタが最も好きで、信号がない。タクシーが少ない。あるのはダイナミックな大自然である。そんな大自然をバックにハーフマラソン、オーシャンスイム、トライアスロン、etcが開催され、その当時は私もこれらのレースに参加していた。しかし今はトライアスロンのスイムのみにしか参加しない。ドーバーを目指すようになって、耐寒能力を上げるために自分自身を太らせたのだ。おかげで今は身長150cmのチビに対し、体重は60kgの巨漢となった。今の私の体型では陸上で動くのも難儀。これで走れば捻挫間違いない。
初めて私が海のレースに参加したのは、1998年の熱海で行われた3.2kmのOWSレースである。生まれて初めてのOWSレース。胸がワクワク、ドキドキした。そして「ヨーイ ドン!!」の号砲でスタートを切り、バシャバシャと走って海に飛び込み、泳ぎ始めた瞬間、「何よ、これぇー!!」とビックリした。隣を泳ぐ選手とぶつかるのだ。殴る、蹴る、バトル。中には隣の選手のスイミングゴーグルやスイムキャップを剥ぎ取る人まで出る始末・・・。
プールで行なわれるレースは1レーンに入る選手の数は1名で、隣同士の選手がレース中に接触などするわけがない。ところがOWSでは当然レーンやコースロープなど張ってあるわけもなく、時には100名以上の選手が入り乱れての同時スタートになるのだ。スタートからして肌と肌が触れ合う・・・。もっと驚いたことに、泳いでいるときは肉体と肉体がぶつかり合う、まさに「肉弾戦」のスイムレースなのだ。
ビックリはしたが、OWSレースの初体験、知り得なかった自分自身の発見、そしてライバル。このとてもおもしろいレースを知ってから、「OWS」と見聞きすると何故か胸が“ムズムズ”するようになったのだ。以来、私はOWSレースのトリコになった。
中でも印象的だったのはグアムのレースだ。ココスからグアムまで(3.5km)のレースで、ゴール地点で私は最終スイマーの到着を待ちながら、完泳し、上がってくるスイマーたちにねぎらいの声を掛けていた。そして最後に感動したドラマが待っていたのだ。それは最終スイマーが仲間のスイマーに連れ添われながらゴールしたシーンだった。
仲間「最後まで一緒に泳ぐと約束したじゃないか! よくがんばったね! おめでとう!!」
最終スイマー「本当に完泳できて良かった! ありがとう!」
2人は抱き合い、そして泣きながら喜んでいた。もう“もらい泣き”で私も涙が溢れ、そのシーンがにじんでよく見えない・・・。「本当に良かったね。おめでとう!!」と、うらやましさと同時に素直に最終スイマーを称えることの出来る自分がそこにはいたのだ。
今年のドーバーでも同様の感動を味わった。ボランティアのクリフが女性スイマーをサポートしていた。その女性はフラフラになり、ガクガク震えながらもビーチに上がってきたのだ。
クリフ「やったじゃないか! 6時間泳達成おめでとう!!」
チャネルスイマーへの登竜門。「16℃の水温における6時間泳」に挑戦し、成功させたのだ。疲れた中にも、その表情や眼つきには輝きと希望に満ちていた。忘れかけていた感動だった。
さて、ロタのレースでは1周1マイルのコースを2周する。もちろん「“ロタブルー”の海を満喫する。」という意味合いもあるが、「最終泳者と泳いでその感動を共有したい。」との考えもあり、私は大西さん(KFC代表代表)に相談した。
キン「大西さん、ロタの海はとてもきれい。透明度60mのロタブルーを速く泳いだらもったいないです。今日は最終泳者と共に伴泳しながら泳いでも良いですか?」
大西「ああ美幸ちゃん、良いですよ。それでは美幸ちゃんが帰ってきたら最終ですね。宜しく。」
ヨッシャー! ロタブルーの海を楽しむことが出来、最終泳者と感動を共有するんだ。忘れてはいけないあの感動を!!
4. ボランティア
今年、私はドーバーのビーチでもボランティアをしていた。世界のチャネルスイマーと親睦を深めていたのだ。そして今回は泳いでいる皆さんを誘導しながらの「ロタスイムレース」に参加する形になった。
丘ではスタート時間になっても海には入れず、並んでいる人たちで賑わっていた。まあノンビリしていると言えばノンビリしているのだが、おそらくバトルを避けるためだと思われる。すでに私は海に入り、スタート地点でカウントダウンと共にゆっくりしていた。見ると入水地点は港の船揚場のスロープを使用しているのだが、足場が悪いためみんなゆっくりになっている。それでも時間が来ればスタートは切られる。
後から後から、次から次へと泳者の大群が押し寄せてきた。後続の人たちは早く前へ行かないと、スタートは切られているよ。
始めの三角ブイまで団体と一緒に泳いでいたが、それから次のブイまでは距離が長い。徐々にてんでバラバラになり、うねりも入ったせいか、前を見ても波の谷間では目標のブイが見えず、方向確認が困難な泳者が大勢出てきた。まあ前方確認が得意な誰かの後に付いて泳げば問題ないが、人それぞれ速さが違う。始めから「一緒に泳ごう。」と決めているなら簡単で心細くもないだろうが、一人だとやはり泳ぎを止め、止まったり平泳ぎに変えたりで方向確認をする泳者が多かった。
特に泳ぎを突如変えたり、一定のペースで泳げなかったりする泳者の後ろに付くと、自分も戸惑い、追突する危険性も高くなる。方向確認は波の山頂で少し頭を上げ、目標を確認したら素早く元の泳ぎに集中して欲しいものだ。まあ普段の練習で取り入れている泳者には問題ない技だが、普段からそのような習慣がない泳者には難しい技かもしれない。
2番目のブイの下にはいつもながら“セレナ(ロタのダイビングショップ)”の林さんが水中写真を撮っており、私はピースのポーズと手を振るポーズをしながら楽しんでいた。
次のブイまでもかなり遠いが、陸上の白い建物を目標にして泳げば問題なし。
最近のOWSレースは、小耳に入った情報によるとプールのようなコースラインが海底に引かれてあったり、コースロープ区切られたりしていて、いたれりつくせりのレースもあるようだ。しかしこれがOWS? 自然の開かれた海を泳ぐには、それなりの泳者の技量も要求される。このロタトライアスロンのスイムレースが“海のレース”なのだと思う。だからけっこう沖合の透明度の高い海面の上を泳がせてくれるのだ。
日本国内でこんなレースが開催されるだろうか? このような自然の中で存分に楽しませてくれる楽しさに引かれ、KFCの仲間たちに引かれ、私は毎年ロタトライアスロンに参加しているのだ。
5. 実態は
ロタのレースなどの脱線話ばかりで、本家本元の報告を忘れそうなので、ここからは話を戻すことにしよう。まあ脱線話が長いのは、本家本元の報告は「あまり良くなかった。」と思って頂いて良い。
11月27日午前4時18分、静岡県静岡清水区三保から同県沼津市戸田までの2-wayを私は泳ぎ始めた。
空はまだ暗く、気温は11度。水温は19度。久しぶりに寒い海を満喫した。
満月を少し過ぎたところで、明るい月と星と少しの雲が私を後押しする。揺籠のような波に揺られ、私は暗闇に見えぬ戸田を目指して水飛沫を上げて行った。
駿河湾の潮は普通岸にそって半時計回りに廻っている。しかし今日は何故か時計回りに廻っていた。潮が時計回りにとか、半時計回りとか、そんなことに関わらず、私は泳がなければならない。とりあえず伴走船「光星」の脇をひたすら泳ぎ続けていた。
じきに東の空が明るくなり、北側には富士山が見え始めた。朝焼けの陽の光は私の頭上の雲をオレンジ色に染め、赤富士を期待した私は富士の姿が黒かったのでビックリしていた。
まだ暗いうちはスピードがゆっくりだったようだが、明るくなってからは潮に乗ったのか、サブパイロットは始めの4時間よりその後の2時間の方が進む距離が長いのでビックリしていた。
調度お昼過ぎたころか。距離も戸田までの半分を越し、北東の風、風速5~6mは、伊豆半島に押さえられて風速2~3mの静かな海面に変身させていた。
空は晴れたり曇ったり、水温は20℃弱、前半は波高が1.0mあったが、後半は伊豆半島で押さえられた風のため0.5mになり、ベタナギになった。
海の色は前半より後半の方が黒くなったような気がする。透明度はすこぶる良し。だから「黒潮」と言うのか? 時折クラゲを見る程度で、「カラフルな魚が来ないかなぁ~。」と思いながら泳いでいた。
雲のせいか気温は20℃より上がらない。「寒いなぁ~。」と思い始めると先週まで行っていたロタの海と大きな違いを気付き始めた。
寒さは徐々に足の痛みへと変化していった。戸田の港が目の前に見える。いつもの練習で感覚的には「後40分だ。」と判断が出来た。しかしそれからは泳いでも、泳いでも景色は横へ、横へ移動するだけ。先程見た折り返す白灯台が見えない。大潮のせいか潮が速く流されているのか?でもそんなこと考えても泳ぐしかない私。心は自分の頭の計算から外れショックを受けていた。何回も何回も「折り返し地点は何処?」と聞きたかったが、それを聞いても仕方のないこと。ひたすら横に見える景色と伴に泳ぎ続ける。
時間は始めの「後40分!」と言われてから、40分毎の栄養補給を何回したことやら…。
当初戸田港のビーチに上がる予定だったが、戸田港の外のテトラに上がるように指示された。伴走船「光星」がそれ以上岸に近寄れないところまで来ると、私は残り100mを、一人戸田を目指して泳いで行った。時間は13時58分。三保を出て9時間40分。ようやくその1-wayは終了した。
戸田を折り返し、三保を目指したが、右足の大腿部が痛み始め、何度も悲鳴を上げていた。痛みの増加は泳ぐ気力をどんどん奪いさっていく。何度も止まり、足のストレッチングをした。「この足の痛みから逃れる方法はないのか…?」痛みを逃れる方法がこの泳ぎを辞める決断を下すのに、そう時間はかからなかった。それは調度石井コーチがお昼ご飯を食べようとしている時で、私が「上がりたい。」と言うと露骨に嫌な顔をした。しかしながら右大腿部の激痛のため、14時35分、戸田を折り返して37分後、私は伴走船「光星」につかまったのだ。
泳ぐのを止めたのは私だが、慣れないパイロット。もう少し潮を読んで欲しかった。GPSばかり頼り、潮に乗ろうとしてくれなかった。コース取りミスが大半であった。
2003年に参加した「ロタブルー・トライアスロン」の報告⇒「file2003.PDF」をダウンロード
| 固定リンク | コメント (0) | トラックバック (0)














最近のコメント