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わくわく、どきどき、台風の目。

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2007年1月の記事

お誕生日記念、祝ベスト記録達成

 2007年1月9日、淡島~大瀬崎間(約10km)の2wayをキンちゃんが泳ぎました。その結果は次の通りです。

  •  1way:淡島 ⇒ 大瀬崎 = 2時間53分
  •  2way::大瀬崎 ⇒ 淡島 = 3時間38分
  •  合計:6時間31分

P10900293_2  データ:天候は晴れ 風は午後から少し強くなったが、おおむね微風

 水温は18~19℃ 気温は6~13℃ 波高は0.5m 絶好の遠泳日和

 この記録はキンちゃんの自己ベストです。

 1月6日から8日にかけて日本上空を台風並みの勢力を持つ「爆弾低気圧」が通過しました。このため海は大荒れ。9日は大丈夫か心配しましたが、「嵐を呼ぶ女」と呼ばれたキンちゃんの汚名を返上するかのように良い天気に恵まれました。1月10日はキンちゃんの誕生日。きっと海の神様はこれを祝って好天を与えてくださったのだと思います。
 経験上、今の時期は午前中、潮や風は淡島から大瀬崎に向かって順風満帆で、午後からは風が変わり、波が高くなります。そこで今回は1way目に淡島→大瀬崎を、2way目に大瀬崎→淡島を選びました。これは今回がキンちゃんの誕生日を記念して「ベスト記録狙い」だからです。結果、見事なベスト記録が誕生しました。お誕生日を含めておめでとうございます!
 こんな「お誕生日記念、祝ベスト記録達成」の手記を、地元の生活や海の仕事を踏まえて臨場感タップリにキンちゃんが書いてくれました。

1.爆弾低気圧のプレゼント
 年末年始は「和菓子(有)フジタヤ」にとって書き入れ時。朝は4時から夜は21時まで働き詰めで、私の愛用している赤い長靴が履き過ぎで足の裏と小指が痛くなるほどだ。今も思うようにしっかり歩けない。3週間ぶりの休みを取り、私は1月9日の海練習のため、いつもの内浦長浜にある民宿「桂」へと8日に足をむけた。
 バスから眺める景色の海原は、ドンブリコ、ドンブリコ、バチャン、バチャンと波の連打。「ええ、いつもここの風景は凪のはずなのに!」。そこでバスの運転手に話し掛ける。
キン「今日の海は荒れていますね。波が港まで入って来ているね。」
運転手「そうだよ。昨日なんかもっと風も波も凄かったよ。今日はまだ落ち着いたほう。」
キン「そうか・・・。」
 いつも思うがここのバスの運転手さんは気さくな人が多く親切である。
 明日は大丈夫か心配しながらバスを降り、民宿までテクテク歩いて行った。今日はいつもの「冨士」の隣の「駿河」の部屋である。この前はポット3本だったが今日はその中の1本に電気湯沸かしポットが入っており、とても重宝した。なぜなら次の日の朝、遠泳の持ち物で大小2つの水筒に熱湯を入れて持っていくのだ。これは石井コーチが食べるカップラーメンや私の栄養補給品を作るのに使われる。いつもは電気ポットを石井コーチに頼んで持って来てもらっていたが、この日はそのポットを石井コーチのクルマから降ろす必要は無くなった。民宿「桂」の方の細かい気配りだ。
070108_163344_2  「駿河」の部屋は、「冨士」と同様大きな縁側の外はベランダ(物干し?)があり、その先には淡島、その先にとっても綺麗な雪化粧の冨士山がくっきりと覗かせている。手前を見れば海に港。早速窓ガラスを開けベランダへ、波の様子をうかがう。「ああ、あそこのヨット、カタンカタンとマストとマストロープが当たっている。ここでこんなに揺れているということは、沖はかなり荒れて、もっとすごいだろうな。」「あれ~、あの淡島の前に止まっている大きな船は何をしているのだろう。風と波の影響で湾内に待機しているのか。あっ、人がいる。何をしているのかな?」。波の様子を見ながら私は船の観察もし始めた。「あれ~、2艘の船が網を引っ張っているじゃないか。あの船達は合同で作業をしているのかな?」。わからないことだらけではあったが、ずっと病み付きになっているわけにもいかない。私は船頭の菊地さんの家に明日の相談をしに行った。

2.菊地さんの仕事
 菊地さんは漁師だが、家庭の食卓に上がるような魚を捕っているのではない。漁師が漁で必要とする餌の魚、つまり鰯などの小魚を捕っているのだ。これらは生簀に入れて育てられ、必要な時に必要な分だけ生きた状態で売られる。これはある意味、プロがプロを相手に漁をする至難の業なのかもしれない。
 菊地さんが私の泳ぎのサポートに向くのは、生きた餌の魚が入った生簀を引いて走らせる操船テクニックを持っているからだ。これは生簀を連結して移動する祭に、連結ロープが緩んだり張り過ぎたりしないよう、且つ商品である生きた魚が死なないよう、痛まないよう運搬しなければならない。
 生簀本体のほとんどは海の中に沈んでいる。ところが船体はかなりの部分が海上に出ている。これが風波の強い日など、つまり船体の向きと進行方向が一致しないことが日常茶飯事に起こるのである。すなわち目的地に行くのに船はとんでもない方向に向いている時もあるのだ。しかもゆっくり、じっくり走る。こんなテクニックが私ののろい泳ぎのサポートに向くと言える所以だ。
 一般に漁場にすっ飛んで行く漁師は気が短い。普通、遠泳はゴール付近でモタモタする。こんな遠泳に気短な漁師が伴走すると、「普通ならガーッとエンジンを回せばビューンと目的地に到着するのに…」と耐えられないのだ。ところが菊地さんは違う。最後の最後までじっくり派なのだ。ホントに菊地さんと巡り会えて良かったと思っている。
P1090108  そんなことを思い巡らせながらもこの天気だ。菊地さんのお宅に向かう道すがら、「明日は大丈夫か」、「風が強い」と考えながら戸を開ける。
キン「御免下さい。明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。何だか波と風が強いけど、明日はどうですかね。心配で、心配でしかたがないんです。」
奥さん「ああ、主人は明日、やる気満々だよ。日曜日から荒れているが、段々治まってきているからね。石井コーチからも一昨日確認の電話があって、主人が『火曜日には治まる』と言っていたよ。」
キン「そうですか。とっても安心しました。今から栄養補給作って、私の落ち込んでいたテンションを高めます。明日はよろしくお願いします。」
奥さん「はい。明日は藤田さんの誕生日会もやるから、花束は帰りの新幹線で邪魔になるといけないから、ケーキ用意してあるから。待っていますよ。」
キン「エー、ケーキ用意してあるんですか!嬉しい!ありがとうございます。張り切って泳ぎます。」
奥さん「気をつけてね。」
キン「はい。」
と戸を閉めた。
 重たかった足取りは、軽くなり石井コーチが来るまでの行動を考えていた。
 民宿「桂」は男性のお客さんが数十人泊まっている。「もう少ししたら仕事から帰ってきて、寒いからお風呂に入り夕食かな?」「よし今日は皆さんが帰って来る前にお風呂に入ろう。」「それからビール一杯飲みながら、ゆっくりのんびり栄養補給を作ろう。」
 この民宿に泊まる客層が私は段々わかってきて、玄関に用意してあるスリッパを数えれば、その日に何人ぐらいのお客さんが泊まるのかわかる。「お風呂は2つあるが、みんなが帰ってくるころに私がお風呂に入っていたら、開くのを待たせてしまうかもしれない。」など、自由気ままな私はお風呂を先にした。
070116_0805551_2  入浴後は「フジタヤ」のパート、築山良美さん(73歳)がいつも私の海練習に行く時に持たせてくれるサツマイモの甘露煮をつまみに部屋でビールを飲み、栄養補給を作り、テレビを見ながらのんびりしていた。外を見ればもう真っ暗。あの淡島の前で止まっている大きな船の光がこうこうとし、人が船の後ろで何かをしている。大きな船の周りには5艘の船で囲まれていた。
 そうこうしている間に気が付いたら20時。明日の荷物整理に取り掛かった。
 間もなく石井コーチが無事に着き、本格的なビールで乾杯。ペチャクチャおしゃべりしながら早めに寝た。
 ちなみに後から聞いた話だが、あの大きな船はカツオ船で、餌を買いに来ていたらしい。いつもは沖でやる作業だが、風波の影響で1日延びている。生簀を2艘の船が引っ張り、カツオ船と生簀に渡りを架け、バケツ1杯いくらでカタクチイワシをカツオ船に分けている。大掛かりだ。寒いし暗い。波の影響で落ちた人が2人いたらしい。バカナガ(漁師さんが履く、胸まである長靴)履いて海に落ちたら、なかなか船には上がれないだろうな。すでに私は慣れているが、水温も冷たい冬の海である。大変だ!
 「バケツ1杯のカタクチイワシ」と言っても生きている魚だ。この計量にはある程度熟練の腕がないと計れないらしい。この計量に菊地さんは一役かっている。このような仕事を持つ菊地さんは、今や私の専属船頭さんのようだ。お世話になった回数は数知れず。まさに舞台裏の立役者なのだ。
 ついでに言わせてもらえれば、遠洋漁船も買った餌の鰯を生きた状態で漁場まで運搬しなければならない。だから遠洋漁船は動く生簀状態で走っていると言って過言ではない。
 こんな菊地さんの仕事を目の当たりにした海練習でもあった。

3.ホカロン騒動
P1090058  栄養補給品は「プラティパス」と呼ばれる医療用の点滴注射に使われる容器のような水筒に入れ、これにホカロン(使い捨てカイロ)を貼って温める。これにはタイミングがあって、早すぎても遅すぎても飲むときに冷めてしまう。経験的に言うと泳ぐ6時間前くらいに貼ると、10時間くらい泳いでいても終始温かい状態で栄養補給品が飲める。
 早めに寝たものの栄養補給品にホカロンを貼る“タイミング”と言う不安が頭の中を右へ左へと移動し始めた。時計を見ると朝の2時。「よし、今から貼ろう。」と蒲団を追い払い、石井コーチと私はホカロン貼りを始めた。これを保温バッグに入れ、再び追い払った蒲団に潜り、安心して寝だした。もう頭の中は何も考えなくて良い。ただ寝ることだけに集中した。

4.港
P1090012  菊地さんの観天望気(地域の景色を見て推移し、天気を予測する)は大当たりで朝から好天に恵まれた。朝の7時に港に着いた時点で気温が6℃。海面からは気温と水温の差から湯気が出ている。「ここは温泉の海原か?さぞかし入ったら温かく気持ちが良いだろう。おまけにとても広い。いっちょう泳いでやるか!」と3人で混浴。おまけにビールよし、泳いでよし、何やってもお構いなし!というぐらいの湯気(?)である。昨日までの不安は何処へ。凪で、絶好の泳遠日和となった。
 菊地さんの船でスタート地点の淡島に近付くと釣人一人。こんなに寒いのによくやっているな、と感心しながら他を観察すると、淡島のホテルからは2部屋のお客さんが浴衣姿のままカーテン越しとベランダ越しで私のことを眺めている。船の上でラノリン塗っている姿も見てくれている。「遠泳中」の幟は掲げているものの、この寒い冬に泳ぐなんてばかか阿保しかいないと思っているに違いない。でも当の本人は何も感じてない。ただ海に泳ぐ練習をしにきただけとしか思っていないのだ。
 石井コーチが水温を計ろうと水温計を海に放り込んだ。するとロープに結んでいた水温計の付根が錆びていたらしく、“ドボン”の音と共に水温計は海の底に落ちて行った。「あっ!また、落とした!」。淡島の岸に近いし海水の透明度が良かったので船上からも水温計が見える。泳ぐ前に私は今日の水温が知りたかったのに。まあ私が拾えば済むことだが・・・。スイミングゴーグルに曇り止めを塗り海水で洗う。
キン「温かいじゃん。もっと冷たいと思った。」
菊地さん「18度だよ。」
 菊地さんは前から調べてあったみたいで、同じように海水に手をつける。
菊地さん「今日もがんばってね。」
キン「よっしゃー!張り切って泳ぐよ!」
キン「よろしくお願いします!」
と言い、はしごから海に入り、まずは水温計拾い。
 水深2mぐらいの所に落ちており、潜って取ろうとしたら私のきらいなウニが両脇に。一回は水温計を手にしたが離してしまい、もう少し深くまで入ってしまった。「しまった!」。もう一度おもいっきり息を吸い込み、ウニがいる海底へ。ウニとウニの間に私のカヨワイ(?)手を突っ込んで水温計を掴んだ。「離してたまるものか!」、恐る恐る持ち上げゲットし、船にいる石井コーチに渡した。周りの観客はさぞかし遠泳中の旗ではなく、潜水中の旗と間違えて掲げているのではないかと錯覚しそうな出だしであった。

5.1ウェイ目
P1090010_2  海水がすごく綺麗である。昨日の波で洗えたのか?お魚やウニがたくさん見える。ここで暫くシュノーケリングではないが、魚と戯れたくなる。潜水して何処まで潜れるか試したくなる。いけない、いけない。私は泳ぎに来たのだ。でもまだまだ見ていたい。お魚に「後でまた来るから待っていてね!」と言い残し、大瀬崎を目掛けてやっと泳ぎ出したのである。
 「観客さん達、長らくお待たせ致しました。ただ今遠泳中ですよ。私が見えなくなるまで、見守って下さいね。」と心で言った。淡島の桟橋過ぎて15分ぐらい過ぎたころか、別の船が近付き菊地さんの船の横に着いた。誰か友達でも来たのだろうか?船は止まり、一人私は大瀬崎を目掛け、いつものように泳ぐ。船が横にいなくても何にも怖くない。泳がなければ前に進まないんだもん。
P1090020  クリアーゴーグルをかけていたものの、天気が良すぎて眩しい。遠くの富士山は綺麗にくっきり見えるのに、近くの船が横に付いても逆光で顔がわからない。今までの経験上、淡島から大瀬崎だと潮に乗って行ける。3時間を切るぞ!今日は2ウェイ。スピード練習をしに来たのだ。泳ぎに集中しだした。
 40分が経過し、40分毎の栄養補給の第1回目が来た。これは空を見ながら顔を出して補給した。それはまだ栄養補給品が生暖かいかもしれないからである。顔を付けて補給するとすぐに補給物が冷たくなってしまうのだ。温度確認をしたのである。「まだ、少しぬるいかな?」
 段々と眩しさもピークになり、菊地さんの方に目をやると、「あれ~、なんか髪型がいつもと違う。う~ん、若く見えるような・・・?さっきは青いバカナガ履いていたが、あれは黒色だ。さっき船着けた時に船頭さんが変わったのかな?右手首に、あれはサポーターか?痛そうだ。やっぱり代わっている」。やっと私が気付いたのは、菊地さんが交代して1時間経過してからのことである。
 ゴーグルを交換してもらおう!「ゴーグルチェンジ!」、「黒!」と泳ぎながら叫ぶ。「わかった!」。石井コーチは次の栄養補給の時に補給品とゴーグルを一緒に放り投げた。カッコをつけなくては。さっきは空を見上げながら飲んだので、「水中でも出来るんだ!」と私は自慢げに補給品を飲み干し、次にスイミングゴーグルを替え、船頭さんの顔を確認。若い。やっぱり違う人だ。それから念入りなチェックが始まる。
 石井コーチはもごもごしながら口を動かし、暇になると若い船頭さんの横に行き、何かを話している様子。こういうときは私、船に置いて行かれちゃうんだ!若い船頭さんは操船する姿勢も菊地さんとは違う。ほとんど立っていることが多い。時には片足を上げたりしてね!
 どうも石井コーチはこの若い船頭さんに伴走のやり方を指導しているようだ。船に私が近付けば船は逃げるし、船から私が離れれば船は追いかけてくる。漁師としてはベテランかもしれないが、生身で泳ぐスイマーの横について操船するのは初めての経験だろう。やはり船との接触は怖いし、かといって離れるわけにもいかない。当初は蛇行して「大瀬崎を目指す」よりも「どうしてよいのかわからない」状態であったのである。コースとスピードを合わせてくれれば私は充分であるし、スイマーの水面からから見た視界は数百メートル。よほど高い山でもあれば見えないこともないが、私はクロールで泳いでおり、前は見ないように訓練されている。だから船だけを見て泳いでいるのだ。その分、船の中は充分に観察させてもらっているが、何を話しているのかは聞こえないし、私だけその話の中に入れないのは寂しい思いがある。
 石井コーチは「遠泳はチームワークが重要」といつも言っており、若い船頭さんとも雑談をしながらコミュニケーションを図っているようだ。漁の話でもしているのだろう。築山良美さんの作ってくれた美味しいサツマイモの甘露煮を若い船頭さんに勧めている。食べ物の話もあるだろうし、いちおう船の免許も持っている石井コーチ、話題は欠かさないほど持っている。
 そんな石井コーチだからおしゃべりに夢中で私と遊んでくれない。多分、初対面だから恥ずかしいのか?まあ私も恥ずかしがり屋だから、ブタバナやってきても「一人でピエロでもやりん」と相手にはしてあげないけどね!
P1090051  3回目の補給。大瀬崎に近付くに連れ「19℃だよ」と石井コーチ。「ヌルイヨ」と答える私。今で2時間だ。後1時間で大瀬崎に着かなければ!前を見て大瀬崎を確認。ダッシュしよう。またもや無言で泳ぎ続ける。その代わり船の上では話しに花が咲いている模様。幾度と泣き、幾度と置いて行かれて船尾につく。「すぐにわかるよ。石井コーチおしゃべりだもん!」。置いて行かれようが何されようが私はびくともしない!こうやって船の様子を見るのが好き。若い船頭さんが何本タバコ吸ったかもちゃんと数えているからね。
 そうこうしているうちに4回目の栄養補給。2時間40分経過。石井コーチは「後700」とか叫ぶ。「わかった、わかった。20分以内には大瀬崎に着きますよ」。少しピッチを上げ2時間53分、10時29分に大瀬崎到着。
 周りにはダイバーがおらず、この時間帯はダイビングしているのか?寒いでお客さんが来ないのか?水温が19℃と温かいし、風はそう吹いてないし、天気が良いとくればもうこっちのもの。ビーチで準備体操のパフォーマンスでもしようか?ビーチダッシュでもしようか?♪YMCA♪と踊ろうか?石井コーチと若い船頭さんをいろいろやって笑かしてやろうかとも考えたが、そんなことしなくてもちょっと変わった黒い大熊がノソリ、ノソリと海に入って泳ぐ姿にそっくりな私。それを想像するだけで笑いは取れるだろう。

6.2ウェイ目
P1090036_2  大瀬崎のビーチで手を上げて折り返しの合図を待つ。この瞬間が結構好きな私。石井コーチのホーンの合図で黒い大熊はノソリ、ノソリと海に入り、泳ぎ出す。遠泳、海練習は、毎回いろんなことを感じながら泳ぎ始める。海が毎回、毎回同じ顔をしないように、私が感じることも毎回違うのだ。何を感じ、何を思うか。それを探りながら泳ぐのが私流。これがたまらなく好きなのだ!
 やはり海水は綺麗である。おおっと、泡の大群が下から押し上がってきた。思わずビックリして顔を上げてしまったが、そうか、ダイバーの泡だ。しかし結構今回は沖まで来ているじゃないか!ダイバーでもあり、この大瀬でもダイビング経験を持つ私は、ここはドンブカ(岸からすぐに深くなる海)でだいたい普通はこんなに丘から離れた深い場所にはめったに来ないことを知っていた。だから泡の大群にビックリしてしまったのである。行きも「今日はやけに丘から遠い位置で私を一人にして泳がすな?」と思っていたが、ダイバーを避けていたのだ!いつもなら潜っているのが見えるが今日は泡だけだったのである。
 残るは2ウェイを泳ぐだけ。楽チン楽チン。3ウェイは泳がなくて良いのだ。4時間を切ることが目標。始めからダッシュのキックバンバンでスタート。陽射しが優しく当たり、暖かく見守ってくれる。補給品も5回目でやっとチンチンに温かくなってきた。写真を撮るための空見ながらの補給だが、石井コーチと若い船頭さんはよく当たりを見回している。近くに何かがいるのかな?私も真似して息を吸いながら見渡す。あの船についてお話しているのかな?地元の漁師さんだからいろいろなことに結構くわしい。
 今年の1月2日にイカ釣りに出ていった漁師さんが、船から落ちて未だに遺体が見つからないらしい。そんな話しの中で、「あの子(私)落ちても絶対に死なないよね。ずっと泳いでいるよね。」、「俺は信じられない。絶対にやらない!ボーリングとかゴルフとかならわかるけど、マラソンや遠泳なんて苦しいだけじゃん。本当によくやるよ。何考えているのかな?」と、「凄い!凄い!」の連発だったらしい。
 船の雰囲気と視線が後ろへ、後ろへと向き始めた。菊地さんが交代しに来たのだ。でもいつもより速く泳いだ私。経験上から菊地さんは「今頃は大瀬崎の折り返し辺りだ。」と思っていたらしい。まさか折り返してここまで来ているとは思わず、丘ばかり眺めながら操船していた。
 沖でそれを見ていた石井コーチは何回もケータイで菊地さんを呼んだが、操船中はエンジンの音で電話の呼び出し音が聞こえないようだ。結局、私達の船に気が付かないで通り過ぎ、大瀬崎まで行っちゃって、そして戻り際にやっと見つけてくれたようだ。「こんな沖にいるとは思わなかったよ。」と言いながら交代。いつもの菊地さんに変わった。
 どうも私のために仕事の休みは取っていたものの、カツオ船の餌の積込作業が爆弾低気圧襲来のために遅れ、急遽菊地さんにしか出来ないバケツで何杯かを数える仕事が入ったらしい。とにかくカツオ船には1,200バケツもの生きた餌を積み込むのだ。菊地さんのようにベテランの立会いが必要だ。
 そのお陰で右手首を痛めていた若い船頭さんは休養できて良かったみたいである。「この船は操船の舵輪もリモコン(クラッチとスロットル)も左手だけで出来るから楽なんだ。」と言っていたし、帰ったら医者に行くとも言っていた。職業病か?結構使い過ぎるとガタはくるよな。
P1090078  それからは何だか石井コーチも私もリラックスしたのか、いつものペースに戻った。アッカンベーする~のの、ブタバナする~のの、ジャンケンする~のの、遊び出したのである。もちろん一生懸命泳いでいるけどね。
 犬掻きもした。片手クロールもした。蹴伸びバタ足もした。これは石井コーチが1分間に何ストロークか数えようと腕時計を見たときに意地悪でやるのだ。だいたい30秒過ぎたころが一番腹の立つころで、良いタイミングを見計らってやるのが一番効果的である。船の上では菊地さんが笑い、石井コーチは「バ~カ、ア~ホ~!」と叫んでいるのがわかる。もちろん私は息を吸う時に「ベー!」と舌を出し叫んでいるのは言うまでもない。
 時折“ピッピッ”とクラゲに刺されるが見えない。と、急に水温が下がってきた。淡島に近付いた証拠である。19℃から18℃に落ちる温度は1℃だけだが、その差は結構身に染みるものがある。慣れなければ!
 「あっ!築山良美さんの作ったサツマイモの甘露煮を食べとる!」これは食べ出したらキリがないくらい後を引くのである。サッパリしており、お腹も膨れるので海連習の時はいつも「みんなが楽しみにしているのでよろしくお願いします。」と欠かさず頼んでいる。築山良美さんはいつも快く引き受けてくれ、海練習には欠かせない人になっている。
 「後3キロ!」と石井コーチが言う。「ああ、だいたい残り1時間か!」、「まあこの先、何に出くわすかわからないが、ダッシュは変わらないよ。」と、ドーバーを泳いでいる時を思い出していた。2回目のチャレンジの時、後3キロで船に上がってしまったのだ。
 ドーバー泳の場合、「後3キロ!」と言われても左右に流れる6時間毎の潮で真っ直ぐに泳ぐことは出来ない。目の前にフランスが見えるのに、横へ横へと泳がなければならないのは非常に辛いものがある。去年は後1.6キロというところで3時間もフランスに着くのに時間がかかったという人もいた。潮がとにかく速いのだ。
 どうして?いつもは後1キロの時点でキンに報告するのに、何で今日は3キロの地点で言うのだろう。きっと「速く泳げ!」と指示しているのだと思う。頭の中は“3キロ”、“1時間”とインプットされ、ダッシュを石井コーチの一言で操られてしまった。
P1090089_2  「マリオネットなら手も足も糸が動かしてくれるのに・・・。」と思いきや、海藻が私の頭や身体に巻き付いてきた。「私を操る糸は海藻かい!?」。手、腕が回らない。オマケに前も見えないときた。泳ぐのを止め、海藻取りだ!コンチキショウ、もうちょっと良いものがまとわり付いてくれれば良いのに・・・。でもクラゲだけは勘弁して欲しいけどね。
 海藻を取り、泳ぎ出すとゴミが四方八方囲むように浮かんでいる。汚いな!大きな白いゴミ袋を見つけ、頭はひやり。クロールで泳いでいると下を見ているから何が何だかわからない。暫く落ち着くまでは前を見て、何が浮いているのか確認していた。しかしゴミがなくなれば天下である。恐らく今までの波と風で固まりながら漂流していたのだと思う。
 段々と景色は淡島へ。「あっ!桟橋に釣人発見。3人はいる模様。ホテルには1部屋の家族連れが見ている。」楽しくてしかたがなかった遠泳も、最後には釣人達の拍手とともに14時07分に終わりをつげた。復路は3時間38分。2ウェイの合計は6時間31分。なかなか良い出来栄えであった。
 「梯子さん、ただいま。帰ってきたよ。」暖かい検査着を私は着て、釣人達に「ありがとう!」と言い、菊地さんにも「応援ありがとう!」と声を交わす。とっても良い雰囲気である。
P1090101  船に上がったスイマーは気楽なものである。検査着を着せてもらい、長靴はかせてもらい、温かい飲み物が差し出される。何だか女優になった気分である。石井コーチは大変だな。
石井「キン、コート着るか?」
キン「温かいからいらない。寒(さぶ)くない!」
 風が吹いていないし、脂肪もついとる。昼間だし、私には必要がなかった。震えもない。ただオシッコが一番したかった!港に着き、足の裏が痛いため、不器用に歩いた。そして民宿で温かいお風呂に入った。

7.誕生日会
 18時頃、菊地さんの家に足を運んだ。今日は私の誕生日会でもある。本当はこの前見えていた中川さんが、今日は夫婦揃ってお祝いしてくれる予定だったが、昼ごろから身体の調子が悪くなり、急遽来られなくなってしまった。残念だが仕方がない。と、菊地さんの家に別々で2人の訪問客が。どうも親戚の人らしい。その2人も交えて私の誕生日会が始まった。
 ご馳走が並んでいる。あっ、天ぷら!食べたかったんだ。茶わん蒸しもある。私の大好物。刺身の盛り合わせなど、まだまだ食べ切れないぐらいの料理が次から次へと。ナマコの酢の物も美味しかったな!またデブ一直線である。ビールで乾杯し、ほとんど平らげてしまった!
070109_064553  話しは菊地さんと石井コーチのデモンストレーション。飽きることはない。菊地さんは今日の仕事の話をしてくれた。今日、積んだカツオ船は焼津の船(500トンクラス)だそうで、南方のキリバスの方まで漁に行くらしい。キリバス付近には良い漁場があるそうだ。船員15名のうち、半数はキリバスの人。昨今の「200海里問題」でキリバスの人に働いてもらう反面、キリバスの漁場を提供してもらう取り決めが出来ているらしい。キリバスの人にも日本の漁法を勉強してもらっているようで、お互いが助け合っているのだ。航海の安全と豊漁を祈願した。
 遠洋漁船の中身なども伺ったが、菊地さんが漁業を通して国際派であることも驚いた。普段、私たちが「美味しい、美味しい」と食べている魚も、こうした漁民の方々の努力の上に成り立っているんだなぁ~と思うと、感謝せずにはいられなかった。
P1090106  ケーキが出され、石井コーチが歌を歌ってくれた。顔に似合わず歌は上手いんだな。歌に聞き惚れ、私はロウソクの火を吹き消した。でも本当は消したくなかった。ずっとこのまま時間が止まってしまえば良い。皆さんの暖かさに触れ、この幸せをずっと感じ続けていたかった。
 こんな誕生日会は何年ぶりだろう。ああそうだ。前は初島~熱海を往復した時に、初島の漁師、田中さんのご家族を囲んでお祝いしてもらったことがあった。懐かしい。そして歳をとるごとに、一歩一歩歩いている自分を感じた。

   誕生日に思ったこと(10)

  1. 両親に「生んでくれてありがとう」。
  2. 周囲の人たちに「ここまで育ててくれてありがとう」。
  3. 皆さんとの出会いにありがとう!「一期一会」
  4. 皆さんがいるからがんばれる。皆さんの存在にありがとう。
  5. 皆さんに幸運がふりそそぎますように。
  6. 皆さんの幸せがずっとずっと続いてくれますように。
  7. 皆さんに私の気持ちが届く距離にいてくれますように。
  8. 皆さんがいれば私の夢はかなうよ。そう信じられるもの。
  9. 回り道も寄り道も、みんな私の宝物になった。
  10. 「夢」、「情熱」、「希望」、これを失うまで私は老けない!

 まだまだ私は前進します。見ていて下さい。今回の遠泳に協力して下さった皆さん、ありがとうございました。数しれないほどの皆さんの努力、心が一つとなり、私の遠泳はここまできました。明日からも心新たに泳ぎ出します。どうか見守っていて下さい。宜しくお願いします。

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